読み物・食文化
愛媛の二つの鯛めし ― 炊き込みの北条鯛めしと、生の宇和島鯛めし
愛媛の「鯛めし」は一つではありません。鯛を丸ごと炊き込む中予の北条鯛めしと、刺身をタレでご飯にかける南予の宇和島鯛めし。調理法も来歴も異なる二つの郷土料理を、文化庁「100年フード」認定の記録をもとに整理します。
同じ名前の、まったく違う料理
愛媛で「鯛めし」を頼むと、県内のどこで頼むかによって、まったく違う料理が出てきます。ひとつは鯛を米と一緒に炊き込んだご飯。もうひとつは、鯛の刺身をタレにからめて熱いご飯にのせたもの。前者が松山を含む中予地方の「北条鯛めし」、後者が南予・宇和島の「宇和島鯛めし」です。県魚である真鯛を使う点は同じでも、調理法も食べ方も別物で、県内では両者を区別して呼び分けています。
北条鯛めし ― 鯛を丸ごと炊き込む
北条鯛めしは、鯛を一匹丸ごと米と一緒に炊き込みます。特徴は、具を足さないことです。ごぼうや人参といった野菜、揚げなどは入れず、鯛とだし昆布だけで炊く。炊き上がったら身をほぐしてご飯に混ぜ、鯛の出汁が回ったご飯として食べます。
由来としては、神功皇后が松山の鹿島明神に立ち寄った際、地元の漁師が献上した鯛をのせて飯を炊いたのが始まりと伝えられています。松山市北条地区の名を冠して呼ばれますが、中予一帯で親しまれてきた食べ方です。
宇和島鯛めし ― 刺身をタレで、飯にかける
宇和島鯛めしは、火を通しません。新鮮な真鯛の身を薄くそぎ切りにし、醤油・みりん・生卵・ごま・だし汁などで調えたタレと混ぜ、温かいご飯にかけて食べます。伊予水軍が船上で食べていた漁師料理が起こりとされ、地元では「ひゅうが飯」とも呼ばれてきました。生の鯛を使うこの食べ方は、全国でも宇和島にしかない独特のものとされています。
どちらも「100年フード」
この二つは、文化庁が地域の食文化を認定する「100年フード」の伝統の100年フード部門に、令和3年度、そろって認定されました(認定の公表は令和4年〈2022年〉3月3日)。愛媛からは同じ年度に、いぎす豆腐が伝統部門、津島の六宝と三津浜焼きが近代部門で認定されています。ひとつの県から、同じ魚を使う二つの郷土料理がともに認められたかたちです。
道後で食べ比べる
道後温泉のまわりには、両方の鯛めしを扱う店があります。炊き込みと生、どちらも出す店では一度に食べ比べることもできます。どちらが上ということはなく、成り立ちも味の方向も違う二つの料理として並んでいます。旅程に余裕があれば、片方だけでなく両方を試してみると、愛媛の海と米の食べ方の幅が見えてきます。
各店の提供内容・営業時間は変わることがあります。訪ねる前に、各スポットの詳細ページと店舗の公式情報をご確認ください。
※ 由来には諸説あります。ここでは公的機関が公表している説明にもとづいて紹介しています。
この記事に登場するスポット
出典・参考資料
- 文化庁「全国各地の100年フード(愛媛県)」 ↗
- 松山市公式ホームページ「『北条鯛めし』と『三津浜焼き』が『100年フード』に認定されました」 ↗
- 愛媛県観光物産協会「愛媛に行ったら絶対食べたい鯛めし」 ↗
最終確認: 2026年7月